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祈りと汗の実践──三代の想いを紡ぎ続けて

更新日:11月25日

「人間一人の一代限りの仕事では、たとえ“いい仕事”であっても、大したものは現れまい。 続けて“祈”を継承すれば、道ができてくる。 その道を行けば、必ず神と出会う。 祈りとは、愛と汗の実践である。 神に出逢うまで、歩みつづけよ。」

この言葉は、私が経営の中で何度も立ち戻る、大切な“道しるべ”です。 それは、二代目──私の大叔父が残した言葉。 祖父(初代)が45歳の若さで急逝したあと、家業を支え続けてきた方です。

私の祖父は、戦後まもなくの創業期に、命を削るようにして事業を切り拓きました。 けれど、わずか45歳で急逝。 時代も、会社も、まだまだ不安定な中での出来事でした。

祖父亡きあと、会社を支えたのが、父の兄──二代目にあたる私の大叔父でした。 彼は若くして会社の中心に立ち、事業を法人化し、樋口メリヤス工業株式会社として形を整えてくださいました。 そしてなんと92歳まで生き抜き、父や私たちに「祈りと汗の経営とは何か」を、背中で教えてくださいました。

一方で、私の父はそのとき19歳。 本来なら、進学して夢を追っていたはずの年齢です。 けれど、家業を残すためにすべてをあきらめ、工場に入りました。

父の人生は、ひたすら「継ぐこと」と「守ること」だったと思います。 借金を背負いながらも、社員を守り、技術を守り、祖父と兄の想いを引き継ぎました。 父は多くを語らない人でしたが、あるときだけ、壁に飾られた一枚の書を指差して言いました。

「これだけは忘れたらあかん」

それが、二代目の言葉です。

私は三姉妹の三女です。 姉たちはそれぞれの家庭を持ち、気がつけば、父と工場をともにしていたのは私でした。

家業を継ぐ決断をしたとき、それは夢でも希望でもなく、 ただ「私がやらなければ灯が消える」という、強い責任感でした。

けれど現実は、想像以上に苦しいものでした。 経営は厳しく、父が抱えていた負債も重く、将来も見えなかった。 それでも、踏みとどまることができたのは、 「この会社には、三代の祈りが込められている」と信じられたからです。

今、私たちは“つつした”という靴下をつくっています。 履けない人にも履けるように。 肌が敏感な人、足に悩みを持つ人、障がいのある方。 そういった方々の声に寄り添うために生まれた商品です。

つつしたには、祈りがあります。 そして、汗があります。 環境にも、肌にも、人の心にもやさしいものを届けるために、 私たちは日々、糸に心を込めています。

祈りとは、愛と汗の実践である。 その言葉の重みを、私は身をもって知りました。

だからこそ私は、祖父の想いを、父の歩みを、そして二代目の教えを、 これからも大切に抱いて、次の世代につないでいきたいと思います。

「神に出会うまで、歩みつづけよ」 この言葉の意味を噛みしめながら、今日も私は歩んでいます。

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